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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)3038号 判決 1984年11月27日

原告(反訴被告)

西村勇

被告

新井一郎

被告(反訴原告)

ニッポンレンタカーサービス株式会社

主文

一  被告新井一郎、被告(反訴原告)ニツポンレンタカーサービス株式会社は、各自、原告(反訴被告)に対し、金二一三万八五五九円及び右金員に対する昭和五一年四月二七日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告(反訴被告)のその余の請求を棄却する。

三  反訴原告(被告)ニツポンレンタカーサービス株式会社の反訴請求を棄却する。

四  訴訟費用中、原告(反訴被告)と被告(反訴原告)ニツポンレンタカーサービス株式会社との間に生じた分は、本訴及び反訴を通じ、これを五分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告(反訴原告)ニツポンレンタカーサービス株式会社の負担とし、原告(反訴被告)と被告新井一郎との間に生じた分は、これを三分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告新井一郎の負担とする。

五  この判決は、主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  本訴請求の趣旨

1  被告新井一郎、被告(反訴原告)ニツポンレンタカーサービス株式会社は、各自、原告(反訴被告)に対し、金一九六九万六九四〇円及び右金員に対する昭和五一年四月二七日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  本訴請求の趣旨に対する答弁

1  原告(反訴被告)の本訴請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告(反訴被告)の負担とする。

三  反訴請求の趣旨

1  反訴被告(原告)は、反訴原告(被告)ニツポンレンタカーサービス株式会社に対し、金一五三万〇五七〇円及び内金七三万〇五七〇円に対する昭和五六年八月五日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、反訴被告(原告)の負担とする。

3  仮執行宣言

四  反訴請求の趣旨に対する答弁

1  反訴原告(被告)ニツポンレンタカーサービス株式会社の反訴請求を棄却する。

2  訴訟費用は、反訴原告(被告)ニツポンレンタカーサービス株式会社の負担とする。

第二当事者の主張

一  本訴請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和四九年七月二五日午後二時ころ

(二) 場所 東京都江東区亀戸二丁目二五番一五号

(三) 加害車両 普通貨物自動車(品川四四わ一〇〇一)

右運転者 被告新井一郎(以下「被告新井」という。)

(四) 被害者 原告(反訴被告、以下「原告」という。)

(五) 事故態様 被告新井は、助手席に原告を同乗させて加害車両を運転し、被告(反訴原告)ニツポンレンタカーサービス株式会社(以下「被告会社」という。)の駐車場から道路に出る際、事故現場の右駐車場出入口の道路との境に段差があるのを直前に至つて発見し、急ブレーキをかけたため、原告は加害車両のフロント部分に頭部を衝突させた。

(六) 以下、右事故を「本件事故」という。

2  責任原因

(一) 被告新井

被告新井は、加害車両を被告会社から賃借し、これを自己のため運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条の規定に基づき、また前記のとおり前方不注視の過失により本件事故を惹起せしめたものであるから民法七〇九条の規定に基づき、原告に対し損害賠償責任を負う。

(二) 被告会社

被告会社は、自動車の賃貸を業とする会社であるが、加害車両を所有し、同車両を被告新井に賃貸したものであり、自賠法三条の規定に基づき損害賠償責任を負う。

3  原告の受傷及び治療の経過

原告は、本件事故により、両側顎関節頭骨折等の傷害を負い、昭和四九年七月二五日から同月二七日まで落合第一診療所に通院し(実日数三日)、同年八月一〇日から同年一一月一日まで慶応義塾大学病院に通院し(実日数一八日)、同年九月一八日から同年一〇月三日まで都立大久保病院に入院し(一六日間)、同月四日から昭和五〇年七月二日まで同病院に通院し(実日数一三日)、昭和四九年一一月二二日から昭和五〇年一月二〇日まで及び同年三月一三日から同年五月一四日まで東京歯科大学病院に通院し(実日数一五日)、同年二月一九日から同年三月一二日まで同病院に入院し(二二日間)、それぞれ治療をうけたが治ゆせず、昭和五〇年七月二日症状が固定し、次の後遺障害が残つた。

(一) 視力障害

原告の事故前における視力は両眼とも一・〇以上であつたが、本件事故により両眼とも〇・二に低下し矯正不能となつたほか、閉瞼不完全の障害も存する(自賠法施行令第二条別表後遺障害別等級表九級に該当。)。

(二) 咀嚼障害

開口障害及び咬合異常の障害が存する(同表六級に該当。)。

(三) 以上の障害は併合して同表五級に相当するものである。

4  損害

(一) 治療費 金四七万七三七〇円

(二) 看護料 金一万五八九〇円

(三) 入院雑費 金一万七五〇〇円

一日あたり金五〇〇円、三五日間

(四) 休業損害 金一五二万七三七二円

原告は、事故当時訴外国際ソーイング株式会社に裁断師として勤務し、月額金一三万四〇〇〇円(日額金四四六六円)の給与を得ていたものであるが、本件事故による受傷のため、昭和四九年七月二六日から昭和五〇年七月二日までの三四二日間全く就労不可能であつたから、右日額を基礎に右期間の休業損害を算定すると、金一五二万七三七二円となる。

(五) 過失利益 金一七八九万八八〇八円

前記後遺障害の内容・程度からすれば、原告は労働能力の七九パーセントを喪失したものというべきところ、原告はあと二五年間は稼働可能であるから、前記収入を基礎にライプニツツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると、次の計算式のとおり、金一七八九万八八〇八円となる。

計算式 134,000×12×0.79×1409=17,898,808

(六) 慰藉料 金六四六万円

前記入通院治療期間(入院三八日、通院約一〇カ月、実日数四九日)、後遺障害の内容・程度等に照らし、原告の精神的苦痛を慰藉するには、傷害慰藉料は金五六万円、後遺障害慰藉料は金五九〇万円が相当である。

(七) 損害のてん補

原告は、加害車両の加入している自賠責保険から金六七〇万円の支払を受けた。

5  よつて、原告は、被告らに対し、各自、前記4の(一)ないし(六)の合計額から(七)の金額を控除した残額である金一九六九万六九四〇円及び右金員に対する本件事故発生日以後の日である昭和五一年四月二七日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  本訴請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、(一)ないし(四)の事実は認め、(五)の事実中、被告新井が、事故現場の駐車場出入口の道路との境に段差があるのを直前に至つて発見し急ブレーキをかけたことは否認し、その余は認める。駐車場出入口の道路との境には鉄板が敷かれていて段差は存在せず、また、被告新井は道路に出る際一時停止して左右の安全を確認するため普通にブレーキをかけたもので、何ら急激なブレーキ操作をしていない。原告主張の事故は助手席に同乗していた原告の姿勢が正常でなかつたことに起因するものである。

2  同2の(一)の事実中、被告新井が加害車両の運行供用者であることは認める。被告新井が前方不注視により本件事故を惹起せしめたことは争う。

同(二)の事実中、被告会社が加害車両の運行供用者であることは認めるが、事故についての責任は争う。

3  同3の事実中、原告がその主張する各診療所及び病院で治療を受けたことは認め、両側顎関節頭骨折等の傷害を負つたことは否認し、各治療期間、実治療日数及び後遺障害の存在は不知。顎関節の骨折は原告が昭和四八年五月あるいは同年一一月ころ誤つて冷蔵庫を転倒させた際に負つたものであり、右傷害及びこれに対する治療は前記事故と因果関係がない。

また、原告主張の後遺障害は、いずれも検査に当つた医師に対して原告が虚偽の応答をした結果導き出されたものであり、原告の詐病である。

4  同4の事実中、(一)ないし(二)は不知。(四)の事実中、原告が前記事故当時訴外国際ソーイング株式会社に裁断師として勤務し、月額金一三万四〇〇〇円の給与を得ていたことは認め、その余は不知。(五)は否認、(六)は争い、(七)は認める。

三  反訴請求原因

1  原告は、被告会社に対し、本訴請求原因のとおり主張して昭和五一年四月一四日本訴を提起したが、原告主張にかかる視力障害及び咀嚼障害は詐病であり、咀嚼障害は仮に詐病でなくても事故との因果関係がないのであつて、原告は被告会社に対し何ら損害賠償請求権を有しないことを熟知しているにもかかわらず、不当にも本訴を提起したものである。

2  原告の不当な本訴提起遂行により、被告会社はやむなくこれに対抗する措置をとり、次の損害を被つた。

(一) 調査費用 金三五万〇五七〇円

被告会社は、訴外株式会社損害保険リサーチに対し、原告の主張する後遺障害の有無につき調査を依頼し、調査費用として左記のとおり合計金三五万〇五七〇円を支払つた。

(1) 昭和五一年八月二九日 金六万五七〇〇円

(2) 昭和五五年八月二日 金六八一〇円

(3) 同年八月二〇日 金五万六四二〇円

(4) 同年一〇月二日 金一九万二七二〇円

(5) 同年一〇月一九日 金二万八九二〇円

(二) 医師意見書費用 金二〇万円

被告会社は、独協医科大学教授小暮文雄に対し、原告の主張する視力障害の有無について意見を求め、その意見書作成費用として昭和五四年七月三一日同教授に金二〇万円を支払つた。

(三) 弁護士費用 金九八万円

被告会社は、原告の本訴提起に対抗するため、弁護士である被告会社訴訟代理人江口保夫らに応訴を依頼し、着手金として金一八万円を支払い、謝金として金八〇万円を支払うことを約した。

2  よつて、被告会社は、原告に対し、右損害賠償額金一五三万〇五七〇円及び右金員から弁護士費用中謝金八〇万円を控除した内金七三万〇五七〇円に対する反訴状送達の日の翌日である昭和五六年八月五日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

四  反訴請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、原告が被告会社主張のとおり本訴を提起したことは認め、その余は否認。

2  同2の事実は、いずれも不知。

第三証拠関係

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録に各記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

(本訴請求について)

一  請求原因1(事故の発生)の事実中、(一)ないし(四)の事実、(五)の事実中、被告新井が助手席に原告を同乗させて加害車両を運転し本件駐車場から道路に出る際、出入口でブレーキをかけたことにより本件事故が発生したこと、同2(責任原因)の事実中、被告新井及び被告会社が加害車両の運行供用者であること、同3(原告の受傷及び治療の経過)の事実中、原告が、本件事故により原告主張の各診療所及び病院で治療を受けたことはいずれも当事者間に争いがない。

二  そこで、まず右事故の態様及び原告の受傷の部位・程度について検討する。

1  前記当事者間に争いのない事実に、いずれも原本の存在及び成立に争いがない甲第一号証、第二号証、第一六号証、第一九号証、第二一号証、成立に争いがない甲第二四号証の一ないし三三、乙第二号証、第三号証の一ないし三、第六号証、第九号証の一ないし四及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(一) 右事故の現場は、被告会社駐車場の出入口に当たるが同駐車場は道路平面より約三〇センチメートルも高い平面上にあり、そのため右出入口には車両通行時の衝撃を和らげる目的で鉄板が隙間なく並べられていた(原告主張の段差の存在を認めるに足りる証拠はない。)が出入口から道路に向けての約一メートル幅の区間は、相当急な下り坂をなしていて、車両がブレーキ操作なく通過する場合においても或る程度の衝撃を感じる個所である。

(二) 被告新井は、被告会社から加害車両を賃借し、助手席に原告を同乗させてこれを運転し、右駐車場から道路に出るための右出入口の急坂に至り、突然急ブレーキをかけ、右の事故が発生した(なお、被告らは助手席に同乗していた原告の姿勢が正常でなかつたことが右事故の原因である旨主張するが、右主張を肯認するに足りる事実関係を認めるべき証拠は存しない。)。

(三) 原告は、右事故により右眉部挫創の傷害を負つたため、事故後直ちに落合第一診療所で右の傷に対する応急手当として絆創膏固定による止血の処置を受け、同診療所で昭和四九年七月二七日まで(実日数三日)通院のうえ治療を受けた結果、同日右傷害は治癒した。その間、原告は治療を担当した同診療所の医師に対し、顎部の痛み等を訴えることはしなかつたため、同診療所では顎部の診察及び治療はなされなかつた(なお、乙第二号証((担当医師作成の診断書))には、病名欄に「右小臼歯(下顎二本)、左小臼歯(下顎一本)咬合不十分」なる記載があるが、前掲乙第三号証の一ないし三によれば、右の記載は、右七月二七日までの治療期間を経過した後である昭和四九年一〇月一五日に、原告が咬合不十分と訴えて同医師に対し追加記載を要望したため、右医師が書き加えただけのものであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。)。

(四) 他方原告は、昭和四九年八月一四日、慶応義塾大学病院口腔外科で受診し、開口時及び咬合時に痛みがあり、時々両顎関節のクリツキング(顎がカコンカコンとなること)とスライデイング(顎のずれること)を感じる旨訴え、同病院同科で同年九月一九日まで通院して治療を受け、当初は顎部の骨折が疑われたが、同年八月一六日実施されたエツクス線撮影による検査の結果では骨折は発見されず、結局一部の歯に打診痛、鈍痛及び動揺が認められ、咬合状態に異常はなく、開口障害(一・五横指程度)があつて最大開口時に痛みがある等の症状により、外傷性顎関節炎と診断されるに止まつた。

(五) 次いで原告は、同年九月一八日から都立大久保病院で後記の視力検査等を受けていたが、その際医師から顎部が骨折していると思われるので専門医の診察を受けるようにと指示され、同年一一月二二日から東京歯科大学病院で受診し、エツクス線撮影による検査の結果、初めて両側関節顎突起頸部の骨折と診断された。

2  被告は、顎関節骨折は、原告が本件事故以前に誤つて冷蔵庫を転倒させた際に負つたものであると主張し、右傷害及びこれに対する治療と本件事故との間における因果関係の存在を争うので、この点について検討する。

(一) 前記甲第一号証、第二号証及び原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、被告新井が、前記認定のとおり、駐車場出入口の相当急な下り坂で突然急ブレーキをかけたため、その衝撃で加害車両のフロントと座席の間に右半身から転落して下顎をフロントのカウンターに強打し、続いて原告が右手で助手席側窓枠付近に備え付けられた取手をつかみ顔部分を窓付近に寄せる姿勢で起き上ろうとしたところを、再度被告新井がブレーキをかけたことにより、右取手部分に右眉部を強打しその部分に挫創を負つたものであることが認められ、右認定に反する被告新井一郎本人の供述は措信できない。

もつとも、前記認定のとおり、原告は、事故直後応急手当を受けた落合第一診療所で顎部の痛み等を訴えることはしなかつたのであるが、前記認定のとおり、原告の顎関節骨折は、専門病院である慶応義塾大学病院口腔外科におけるエツクス線撮影によつても発見されなかつた程のものであつたことが窺えるうえ、原告本人尋問の結果によれば、原告は事故直後当時、顎部に多少の痛みがあつたものの、同部外表に外傷を認めなかつたため、眉部の外傷を治療することに専念したことが認められ(右認定を左右するに足りる証拠はない。)るから、事故直後のころ、原告が、その被つた傷害について顎関節骨折を特に意識せず、単なる打撲傷を受けた程度にすぎないものと考えたとしても無理からぬところというべく、更に、前記のとおり、事故後二〇日余を経過した昭和四九年八月一四日には咬合異常等の自覚症状を訴えて前記慶応義塾大学病院で受診しているのであるから、原告が落合第一診療所で応急手当を受けた際顎部の痛み等を訴えることをせず、また事故後しばらくの間顎部の治療を受けていなかつたことをもつて、格別不自然なことと評するわけにはゆかず、まして顎関節骨折の前記事故との間の因果関係の存在を否定すべきものとすることはできないものといわなければならない。

(二) また、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一号証(原告が元勤務していた洋服店の雇主を本件本訴提起後約五か月を経た昭和五一年九月一〇日ごろに訪問して聴取したとする加害者側保険会社社員作成の同日付「供述書」と題する右雇主の供述を内容とした旨の書面)によれば、右書面には、原告が、昭和四九年五月ころからみてその一年か半年前(すなわち、昭和四八年五月か同年一一月ころ)、顎に絆創膏を貼つて雇主方に出勤し、「大掃除中誤つて冷蔵庫を転倒させ顎に怪我をし口も開けられない。」と右雇主に説明した旨及び原告は右の怪我で医者に通つていた様子であつた旨、それぞれ右雇主において保険会社の社員に語つたとの趣旨の記載があり、更に乙第四号証の三(中野歯科医院のカルテ)によれば、原告は昭和四八年一二月四日同医院で受診したがその際同医院のカルテには傷病名として、「下顎骨打撲による顎骨々折の疑い」と記載されたうえ、同日転医の旨記載されたこと(ただし右診断に相応する治療がなされた旨の記載及び転医先の記載はない。)が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。しかしながら、右乙第一号証は、加害者側保険会社社員に対する再伝聞の供述録取書にすぎず、原告本人尋問の結果に照らすと、右乙第一号証に記載のとおり原告が怪我をしたものと認めるに足りず、また乙第四号証の三は、右受診当日に右傷病名と転医の旨が記載されているだけで他に何の記載もない、カルテとしては極めて不備なものであるから、右各証拠は、いまだ原告が冷蔵庫を転倒させて顎に怪我をした事実の有無及び右怪我に至る経緯並びに怪我の位置、程度を明らかにするに足りるものとはいえず、結局原告が右事故以前において顎関節骨折の傷害を負つてその治療を受けていたこと、あるいは咬合の異常を訴えていた形跡が存したことを認めるに足りる証拠はないことに帰する。他に前記認定を左右すべき証拠はない。したがつて、右事故以前に原告が顎関係骨折の受傷をしていた旨の被告らの主張は採用できない。

3  以上によれば、原告は、前記認定の事故によつて両側顎関節骨折の傷害を被つたものというべく、右認定を覆すに足りる証拠はないものといわなければならない。

三  原告の後遺障害について

1  視力障害

原告は、本件事故前における視力は両眼とも一・〇以上であつたが本件事故により両眼とも〇・二(矯正不能)に低下したほか、閉瞼不完全の障害も残つたと主張するのに対し、被告らはこれを争い、右は原告の詐病である旨主張するので、この点について検討する。

(一) いずれも原本の存在及び成立に争いがない甲第一七、第一八、第二〇号証、いずれも成立に争いがない乙第七、第一〇、第一一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第五号証の一ないし五、第一四号証と原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

前記事故後眼の不具合を自覚した原告は、右眉部挫傷を負つたことから右の不具合は前記事故によるものと思い、

(1) 昭和四九年八月一〇日に慶応義塾大学病院眼科で右眼霧視を訴えて受診し、視力検査の結果、右〇・一(矯正後〇・八p)、左〇・六(矯正後一・二)であつたが、以後同年一一月一日まで同病院同科に通院のうえ諸検査を受けたところ、視力は、同年八月一二日が右〇・〇五(矯正後〇・〇六)、左〇・七p(矯正後一・二)と右眼が低下し、翌八月一三日が右〇・四(矯正後〇・九)に回復し、同年九月一七日が右〇・一(矯正後〇・五p)左〇・五p(矯正後一・二)であり、その間八月一三日にはら旋状視野が出現している。

(2) 次いで原告は、昭和四九年九月一七日篠原眼科医院でも受診したが、視力検査の結果、右〇・一五(矯正後〇・三)左〇・二(矯正後〇・三)で、同年一一月一二日が右〇・六(矯正後一・二p)左〇・七(矯正後一・二)であつた。

(3) 更に原告は、昭和四九年九月一八日都立大久保病院眼科で受診し、翌一九日から同年一〇月三日まで一五日間同病院脳外科に入院して諸検査を受けたうえ、同病院眼科で昭和五〇年七月二日まで通院のうえ視力検査を受けたが(通院実日数一三日)、昭和四九年九月一八日が右〇・二(矯正後〇・三)左〇・三(矯正後〇・五)で、同月二八日が右〇・八(矯正不能)左一・〇(矯正不能)と回復し、同年一一月一三日が右〇・五(矯正後一・〇)左〇・五(矯正後一・〇)で、以後同検査結果では視力は両眼とも次第に低下し、昭和五〇年六月一一日が右〇・二p(矯正不能)左〇・二(矯正不能)で、同月一八日が両眼とも〇・二(矯正不能)であつた。また、同病院で同年七月二日右眼の視野に軽度の狭窄が、同日及び同年六月一一日閉瞼不完全が、同年六月一八日眼球運動の制限が、それぞれ初めて出現している。そして、同病院の昭和四九年一〇月五日時点における診断によれば、「現在視力障害に関しては改善傾向が著明である。」とされ、昭和五〇年七月二日の総括的診断によれば、「頭部外傷に基く視力障碍で、気脳法を行つたところ視力はほぼ正常となつたが再び低下している。視力は両眼とも〇・二(矯正不能)であるが、視神経乳頭には異常を見がたい。視野は軽度の狭窄を認める。顎関節手術後両眼とも閉瞼不充分のため兎眼性結・角膜炎を呈し、更に眼球運動が制限されている。」というのであり、症状は同日固定したものとされた。

以上の慶応義塾大学病院眼科及び都立大久保病院眼科での検査を通じて、眼底及び乳頭には何ら異常は認められなかつたほか、都立大久保病院脳外科での検査でも頭部単純エツクス線撮影、血管写、気脳写、脳シンチグラムに異常所見は認められず、結局視力障害についての他覚的所見は検出されなかつた。

(二) 弁論の全趣旨により真正に成立したことが認められる乙第五号証によれば、独協医科大学病院眼科の小暮文雄教授は、視力検査は患者の申立てによる自覚的検査であるため、本人の訴えや応答によつて左右されるものであり、前記の視力経過を辿る場合には視神経炎が疑われるが、眼底視神経乳頭に異常所見はなく、その他視力障害を説明するに足りる他覚的所見は見当らないこと等から、詐病の疑いも十分あるけれども、ヒステリーに多いら旋状視野が出現していることを考えると、外傷性ヒステリーないし神経症の存在の可能性も十分ありうる、との内容の意見書を作成していることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三) 成立に争いがない乙第一二号証、第一三号証の各一及び二並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は、本訴提起後である昭和五六年一月下旬視力検査を受けたところ、両眼とも多少回復してきていることが認められ(右認定を左右すべき証拠はない。)るほか、右本人尋問の実施された昭和五六年七月一六日、当法廷において、原告が碧南市地図(乙第一三号証の二)中の町名の文字(約二ミリメートル四方)の判読を試みたところ、多少ぼやけてはいるが一応判読可能であり、また和文タイプライター用最新文字の索引(乙第一二号証の二)中に表示された文字の判読を試みたところ約三〇センチメートルの距離を置いて明朝体「12ポイント」行の大きさの活字(約三・五ミリメートル四方」の判読が可能な程度の視力を有していたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(四) 当裁判所の関東労災病院に対する鑑定嘱託の結果によると、同病院眼科医師南波久蔵は、「原告の昭和五七年一二月二五日ころの視力検査による両眼の視力は、右〇・三(矯正後〇・七)左〇・三(矯正後一・〇)であり、輻湊不全麻痺が認められるが、前眼部、中間透光体、眼底等には著変は認められなかつた。」と判断していることが認められ、右認定に反する証拠はない。

(五) 以上によれば、原告には、視力低下の原因を明らかにするに足りる他覚的所見は認められないのみならず、視力検査上も視力の低下と回復を反復しており、しかも一旦は視力が両眼とも〇・二に低下し矯正不能とされたものが、その後また矯正可能となり、視力も相当程度回復しているのであるから、その主張する視力低下が果して前記事故によるといえるかどうか極めて疑わしく、また、原告主張の視力障害なるものが右の事故による傷害の後遺障害として残存しているものとすることもできないものというべきである。

もつとも、前記鑑定嘱託の結果中において南波医師は、「原告の視力障害、輻湊不全麻痺は、頭部外傷後遺症のためのものと推定される。即ち、外傷の結果、脳組織、特に脳幹部の障害によつて生じうるものである。」と記述しているが、右記述は、一般論からする推定にすぎないものであつて、原告の場合に右の推定が妥当すべきものとする根拠は何も示めされてはおらず、前記(一)ないし(三)に認定説示したところと対比総合してみると、同医師のように一般論のみから、原告に前記事故による視力低下ないしは視力障害が右事故の後遺症として残存しているものと推認するのは相当でないものというべきである。したがつて同医師の右記述から右の原告主張の点を肯認することはできない。その他原告の全立証あるいは本件全証拠によるも原告の右主張の点に肯認するに十分でない。

しかし、本件全証拠によるも、原告が前記視力検査において、敢えて自己の認識と異つた応答をしたものと認めることはできず、かえつて前記視力検査上は原告に視力回復の時期があつたこと及び前記意見書を作成した小暮教授も、意見書において詐病の疑いを一応肯定するのと同時に外傷性ヒステリーないし神経症の存在の可能性も十分認められるとしていることを併せ考えると、原告の視力低下を詐病といいきることはできず、ただ前記事故との因果関係が原告主張のように肯定できるとはいいがたい程度にすぎないものというべく、その他本件全証拠によるも原告の視力の低下なるものをもつて詐病であるとするに足りないというべきである。

また、前記認定の閉瞼不充分及び眼球運動の制限等の障害についても、右症状の程度を明らかにすべき証拠はないばかりか、これが発現したのは事故後一年近く(顎関節部の手術後四か月近く)も経過した昭和五〇年六月一一日以降であつて、視力低下と同様に他覚的所見に異常はなく、前記事故との間における因果関係の存在に疑問なきを得ないほか、右発現時期は症状固定の診断を受けた日(昭和五〇年七月二日)に近接していて、十分な経過監察もなされていないこと、これと機軸を同じくすると考えられる前記視力障害なるものの前記事故との間の因果関係には、前記のとおり、疑問があることを併わせ考えれば、右の閉瞼不充分及び眼球運動の制限等の障害についても、前記事故との間における因果関係の存在に疑問なきを得ないところといわなければならない。

2  咀嚼機能障害

被告らは、原告主張の咀嚼機能障害は詐病である旨主張するので、この点について検討する。

(一) 原告が前記事故により顎関節を骨折したこと及び右骨折を発見するに至つた経緯は前記認定のとおりであり、前記甲第一九号証及び第二一号証、第二四号証の一ないし三三、弁論の全趣旨により真正に成立したことが認められる甲第四号証並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四九年一一月二二日から東京歯科大学病院に通院のうえ、両側顎関節骨折の傷病名で顎関節部の治療を受け、昭和五〇年二月一九日から三月一〇日までの二〇日間同病院に入院し、同年二月二七日骨折部である両側下顎頭摘出の手術を受け、退院後も同年五月三一日まで通院治療(全実日数一五日)を受けて、開口訓練ないし開口調製により機能回復を図つたが、結局右同日症状が固定し後遺障害として開口障害(開口距離二三ミリメートル、最大開口距離三二ミリメートル)及び咬合異常が残つたとの診断がなされたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二) 当裁判所の関東労災病院に対する鑑定嘱託の結果によると、同病院歯科医師岡野光雄は、原告すなわち被鑑定人につき「被鑑定人には開口障害及び咬合異常が認められ、開口状態は開口径一九ミリメートル程度で開口運動、下顎側方および前方運動は両側顎関節強直による顎関節運動制限と軽度の疼痛を訴える。咬合は全般的に開咬状態で、下顎は正中部より右方へ約五ミリメートル変位しており、特に左側犬歯部より第二大臼歯は開咬咬合の状態にある。咀嚼機能は右開咬状態のため正常な咀嚼機能より低下していると認められ、生米を用いた咀嚼機能の検査結果によると生米の粉砕状態は二〇回から一〇〇回の咀嚼回数により大きな差異が認められず、正常人と比較して明瞭な差異を認める。」とし、右咀嚼障害の原因として、「エツクス線所見及び診査により両側顎関節頭部の挫減骨折が存在し、これにより開口運動、下顎側方運動及び前方運動障害が認められるが、その原因の外傷性下顎骨折による両側性顎関節強直症によるものと思われる。」と診断していることが認められ、右認定に反する証拠はない。

(三) もつとも、成立に争いのない乙第一四号証の一ないし三、第一六号証の一ないし四、第一七号証の一ないし七、第一八号証の四及び五、第一九号証の一ないし三、第二〇号証の六ないし九及び原告本人尋問の結果によれば、原告は昭和五五年九月一一日、一二日、一五日、一〇月八日、九日に、中国料理店・とんかつ店・碧南市役所地下食堂などで食事をしたことが認められ(右認定を左右するに足りる証拠はない。)るが、食事の内容(柔かい物かどうか)及び方法等は右各書証からは何ら窺い得ない反面、原告本人尋問の結果によれば、原告は、食事は柔かい物に限定されるので、外食の際には例えば米飯に味噌汁をかけるなどして顎に負担をかけないよう配慮していることが認められ(右認定に反する被告新井一郎本人の供述は措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。)ることに照らすと、右外食の事実をもつて、原告に咀嚼機能障害が存在しないことの証左とすることは到底できない。

(四) 以上の事実によれば、原告は、その主張のとおり(ただし、症状固定日は前記認定の昭和五〇年五月三一日)前記事故によつて咀嚼機能障害(開口障害及び咬合異常)の後遺障害を被つたものというべく、右認定を覆すに足りる証拠はないものといわなければならない。その他本件全証拠によるも原告の咀嚼機能障害を詐病であるとするに足りない。

四  損害について判断する。

1  治療関係費 金二三万八六八五円

前記甲第一六ないし第二一号証、原本の存在及び成立に争いがない甲第一五号証並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は、前記事故による治療関係費として金四七万七三七〇円を要したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、右費用のうち、前記のとおり原告の視力低下ないし視力障害なるものは本件事故によるものとは認められないのであるから、これに対する治療費は右事故による損害とはいい得ない道理である。もつとも、前記各病院における視力低下に対する諸検査費用(検査のための入院費用も含む。)については、本件事故による受傷の部位・程度、視力低下が右事故発生日から日を浅くして発現していること等に鑑みれば、前記認定のとおり眼の不具合を自覚した原告において、右の不具合は本件事故に起因するものと思い諸検査を受けるに至つたのは無理からぬところがあるというべきであるから、これと本件事故との間の相当因果関係の存在を肯認するのが相当である。

よつて、右の見地から、右の治療関係費中、視力低下に対する諸検査費用(治療費を除く)、右眉部挫創と顎関節骨折及び咀嚼機能障害に対する治療費を確定すべきところ、前記認定の治療の経過及び内容に照らすと控え目にみても、前記治療関係費中の半額はこれに要したものと推認され(右推認を左右するに足りる証拠はない。)、これにより本件事故による治療関係費の損害を算定すると、金二三万八六八五円となる。

2  看護料 金一万五八九〇円

前記認定に係る原告が昭和五〇年二月二七日東京歯科大学病院において両側下顎頭摘出の手術を受けた事実、及び原本の存在と成立に争いがない甲第二三号証並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は右手術の日以降三日間要介護の状態にあつて、職業付添人に付添を依頼し、その報酬として金一万五八九〇円を要したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  入院雑費 金一万七五〇〇円

原告は、前記認定のとおり、都立大久保病院に一五日間、東京歯科大学病院に二〇日間入院して治療及び諸検査を受けているが弁論の全趣旨によれば、右入院中の雑費として少くとも一日当たり金五〇〇円、三五日間で合計金一万七五〇〇円の雑費を要したものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

4  休業損害 金七七万二六一八円

原告が事故当時、訴外国際ソーイング株式会社に裁断師として勤務し、月額金一三万四〇〇〇円(日額金四四六六円)の給与を得ていたことは当事者間に争いがない。原告は、本件事故による受傷のため、昭和四九年七月二六日から昭和五〇年七月二日までの間(三四二日)全く就労不可能であつたと主張し、原告本人尋問の結果中には原告の右主張に沿う部分があるが、前記傷害の内容・程度、治療ないし検査の経過を鑑みると、原告は、前記入院期間三五日については収入の一〇〇パーセントを、右事故日から症状固定日までの通院期間二七六日については収入の五〇パーセントをそれぞれ喪失したものと認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そこで、前記日額金四四六六円を基礎に原告の休業損害額を算定すると、次の計算式のとおり、金七七万二六一八円となる。

計算式 4,466×(35+276×0.5)=772,618

5  逸失利益 金三九九万三八六六円

前記甲第四号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、咀嚼機能傷害の症状固定時である昭和五〇年五月三一日当時で四三才であること、事故後前記勤務先の職を失い一時は土工をして生計を立てていたが重労働であつたため続かず、現在は生活保護を受けている状態であることが認められる(右認定を左右するに足りる証拠はない。)が、原告は本来六七歳までの二四年間の稼働が可能であるところ、右事実及び前記咀嚼機能傷害の程度等に照らし、右の稼働可能の全期間を通じ、労働能力の一八パーセントを喪失したものと推認するのが相当であり、右推認を左右するに足りる証拠はない。そこで前記収入を基礎にライプニツツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益の症状固定日の翌日における現価を算定すると、次の計算式のとおり、金三九九万三八六六円(一円未満切り捨て)となる。

計算式 134,000×12×0.18×13.7986=3,993,866

6  慰藉料 金三八〇万円

前記入通院治療期間(入院三五日、通院実日数五〇日、通院期間二七六日)、後遺傷害の内容・程度その他諸般の事情を考慮すれば、原告が前記の事故により被つた精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては、傷害及び後遺障害を含め、金三八〇万円が相当である。

7  損害のてん補

原告が加害車両の加入している自賠責保険から金六七〇万円の支払を受けたことは、原告の自認するところである。

8  以上の1ないし6の合計額から7の金額を控除すると、その残額は金二一三万八五五九円となる。

(反訴請求について)

請求原因1の事実中、原告が被告会社に対し本訴請求原因のとおり主張して昭和五一年四月一四日本訴を提起したことは当事者間に争いがない。

そして、原告の本訴請求についてさきに説示したとおり、いずれも被告会社の主張に係る、原告の視力障害及び咀嚼機能障害が詐病であること、及び原告の咀嚼機能障害との間に因果関係がないことについては、これを首肯すべき事実関係を認めるに足りる証拠はないのであるから、原告による本訴の提起追行を違法・不当ということはできないのであつて、原告による本訴の提起追行が違法・不当であることを前提とする被告会社の反訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

(結論)

以上によれば、原告の本訴請求は、被告らに対し、各自、金二一三万八五五九円及び右金員に対する事故発生日の後の日である昭和五一年四月二七日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右限度でこれを認容し、原告のその余の請求及び被告会社の反訴請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩崎勤 松本久 小林和明)

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